B L A S T

な、なーんだ。
鏡か。

驚かさないでよ。

ホッと胸を撫で下ろしたと同時に自分が情けなく感じる。

もういやだ。
早く家に帰りたい。

げんなりしながら楓は一番奥の個室に入り、素早くポケットの中からケータイを取り出した。

案の定、画面上は着信の嵐。

上から下までずらりと並ぶ同じ名前。


≪楓今どこにいる≫
≪連絡待ってる≫
≪何かあったのか≫
≪どこだ≫
≪返事待ってる≫


何十通も届いていたメールも全てガヤからのものだった。

最後に彼からメールが届いたのは今から五分程前。


≪頼む。返事してくれ≫


楓はこの時になって事態が深刻になっていることに気付いた。

ユーレイなんかにビビっている場合じゃない。

早く帰らないと。

ガヤが心配してる。

慌てて通話ボタンを押し、ガヤのケータイに電話をかける。

呼び出し音はすぐに消えた。


≪おいこるぁ、楓!なにしてんだ、てめえは!≫


とっさにケータイを耳から離した。

予想はしていたが、あまりの怒鳴り声に鼓膜が破れるかと思った。
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