B L A S T
「あいつは昔からそういうとこあんだよな」
バイクに乗り込むと同時にガヤは重いため息を吐いた。
「そういうとこって?」
ヘルメットを被りながら楓もその後ろに跨った。
いつしか雨は止んで、コンクリートの上は水たまりが作られている。
「秘密主義だろ、あいつ。肝心なことは何も話さねえ」
「…由希さんのこと?」
ガヤは小さく頷く。
「おれイツキと長いこと一緒にいるけど、いまだにイツキの知らねえところいっぱいあんだよ。信用されてねえのかな」
「ガヤ…」
「いつもあいつの前には大きな壁が突っ立ってんだ」
あたしはガヤの背中をさすってあげた。
どこか寂しそうなガヤの姿に自分の姿と重なって見えた。
イツキは誰に対してもそうなんだ。
いつも壁を作って、人を寄せつけない。
だからどんなに近づこうとしても一向に距離は縮まらない。
「ガヤ。あたしね、もうちょっと頑張ってみるよ」
ガヤが振り返る。
「まだ気持ちを伝える勇気はないけど、もっとイツキさんに近づけるように頑張る」
「楓…」
「だから応援してね」
そう言って笑うと、ガヤも笑みを浮かべた。
「健気だな」