B L A S T
体育館の中を覗くと案の定、見渡す限り人、人、人だ。
ほとんどが知らない顔ばかりで男だけかと思っていたが中にはいわゆるレディースらしき女の人もいた。
「イツキはまだ来てねえみてえだな」
舞台幕は閉じられている。
楓とガヤはとりあえずイツキの到着を待とうとプレハブに足を運んだ。
「楓さん!」
するとどこからか聞き慣れた声が聞こえ、振り返るとタクマと一緒にジュンが松葉杖をついて走ってくるところだった。
「純平くん!?どうしたの?」
楓は目を丸くする。
確かジュンは今日の集会に来ることはイツキに反対されていたはずだった。
えへへ、とジュンが舌を出す。
「一兄に内緒で病院抜け出しちゃった」
「ジュンには参ったよ。連れてけってうるせえんだもん」
タクマは困ったようにため息を吐いた。
「責任重大だな、タクマ。イツキにみっちり絞られんぞ」
「覚悟はしてるよ」
「大丈夫。僕がフォローしてあげるから」
「ああ、期待してないけどな。今日はマジでおとなしくしてろよ」
「はあい」
ふと、楓は気がかりなことがあった。
「ねえタクマ。カズは?最近見ないけど…」
ガヤも今気が付いた様子で辺りをきょろきょろと見渡した。
「そういやそうだな。おれもパレード以来顔見てねえや。あいつ今日は来てんのか?」
「それが…」
とたんにタクマの表情が曇る。
「最近連絡が取れねえんだ。学校も来てねえし、家もずっと留守なんだよ」