B L A S T

≪おい楓!聞いてんのかよ!今どこにいるんだ!≫


窓を小さく開けて外の様子を伺う。

向かいのプレハブの二階は電気の明かりが点いたままで人がいる気配もあった。

今のところ感付かれてはいないようだ。

楓は便座に腰を下ろし、受話器の向こうで声を荒げるガヤに静かにするよう促した。


「分かったからもうちょっと声のボリューム落としてよ。今ホント誰かに見つかったらやばいんだって」


そう言うと楓の様子がおかしいと思ったのか、ガヤはおとなしくなった。


≪……やばいって何が≫

「とにかく時間がないの。説明はあとで。お願い。今すぐ助けに来て」

≪ちょっと待て。落ち着け。お前今どこにいるんだ≫

「ガヤ…」

≪どうした≫

「あのね、落ち着いて話すね」

≪ああ。落ち着いて事情話せ≫


楓はバカガヤの声が聞けてよほど安心したのか、張りつめた糸が切れたように緊張が解けるのを感じた。

これで大丈夫だ。

不思議とそう思える。

だが安心するのはまだ早い。

楓は今も敵地の中だ。


「…ガヤ。あたしね」

≪ああ≫
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