B L A S T
Act.22

初めてあいつと会ったのは中学一年の春。

入学式が面倒でこっそり教室を抜け出したおれは学校裏にある物置小屋を見つけた。

当時のおれは今より煙草に依存していたと思う。

いわゆる"ヤニ"が切れて隠れ場所を探していたおれにとってその物置小屋は人目も少なく好都合だった。


――ラッキー。


浮かれ気分でさっそくそこの扉を開けると、目の前に飛び込んできた光景に驚いた。

先客がいたのだ。

物置小屋の中は体育で使うマットが何枚も積み重ねられて、そいつはその上に寝転んで煙草を悠々と吸っていた。

地元では見ない顔だった。

そいつはおれのほうをちらりと一瞥しただけで、何事もなかったかのように目を閉じる。

甘い香りが鼻先をかすめて、おれはチッと小さく舌打ちを鳴らした。

せっかくいい場所を見つけたのに。

そこで喧嘩を売ってその場所を取り上げようと考えたが、無駄な騒ぎは起こしたくないと思い直す。

それにそいつの圧倒的な存在感はただならぬ男じゃないとおれは直感した。


――仕方ない。

別の場所を探そう。


おれはずこずことその場を去ろうとする。

その時だ。




「お前も吸うか」


いつの間にかそいつはおれにライターを差し出していた。

白い肌に黒々とした瞳。

そして赤い唇が妖しく笑う。





それが芦本一樹、

――イツキとの出会いだった。
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