B L A S T

セイジから"風神"に来ないかと誘いを受けたのは、その後すぐだ。

それまで"風神"は天敵だったはずなのにすんなり入ることにしたのは「藤ヶ谷さんなら族長の座を譲る」というセイジの甘い言葉からではなく、ただ自暴自棄になっていたからと言っていい。

結果、最近になっておれはセイジの捨て駒として扱われていたことが判明したのだが。

今ではあの時、何も考えずに"風神"に入ったことを深く反省している。


――ねえ彬兄。一兄は悪くないんだ。全部僕が悪いんだよ。


入院し始めの頃、ジュンはそんなことをよく口にしていた。

イツキに命令されたのか知らないが、たまにBLASTのメンバーがジュンの見舞いに来ることがあり、おれはそいつらを徹底的に追い払っていた。

意固地になっていたのかもしれない。

とにかくイツキに関わるものすべてをジュンに近づけさせたくなかった。

ある日、そのことを知ったジュンはおれに言った。


――僕が悪いんだよ。一兄は悪くない。僕がWAVEに入るなんて言わなければこんなことにならなかったんだから。本当のこと言うとどこでもよかったんだ。WAVEじゃなくてどこのチームでもよかった。僕はただ一兄に認めてもらいたかったんだけなんだよ。


今、思えば。

ジュンがWAVEに入ると言ったあの夜、イツキとジュンの様子がおかしかった。

お互いが目を合わせず、避けていたのだ。

めったに喧嘩はしない二人だったから、その光景は奇妙に見えた。

ジュンがWAVEに入ったこともそのことと関係していたのかもしれない。


――僕はただ一兄に認めてもらいたかったんだけなんだよ。


それに、ここからはおれの直感だが。

もしかしたらジュンは何かを知っているのかもしれなかった。

それが何かと問われると断言できないが、おそらくイツキのことに関することではないだろうか。
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