B L A S T

「ったくなんでこんな時に…」


ガヤを苛立ちを抑えるかのように煙草を何度も吹かしている。


「今日はいろんなことがありすぎた。頭がパンクしちまうよ」


楓は首を傾げる。

もしかしてイツキのことだろうか。


「…いろんなことって?」


と恐る恐る聞いてみるが


「…なんでもねえよ」


と彼は素っ気ない態度だった。


「とにかく今はしばらく様子見だ。まずは相手がどう出るか。この手紙によるとメンバーが襲われる可能性はある。メンバー全員に注意を呼びかけろ。油断するんじゃねえぞってな」

「ああもちろんだ。それで…」


タクマが口ごもると、ガヤは彼の言いたいことが分かったらしく頷いた。


「分かってる。イツキにもそう伝えとく」

「頼む。一番危ねえのはあいつだからな」

「ああ」


ガヤは煙草を灰皿に押しつけると、デスクの上にあった車のキーを手に取った。「楓」


「帰るぞ。今日学校だろ」

「あ、うん…」


時計の針はすでに七時を差している。

学校があることなどすっかり忘れていた。

今から急いで行ったとしても遅刻だろう。


「お前ずっとここにいたのか」

「…うん。心配だったから」

「そうか」


体育館裏に停めてあったのは見慣れたパールホワイトのあの車だ。

朝日に反射して眩しい。

ロックを開けると、ガヤは言った。


「あの由希って女から何か言われたか」
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