B L A S T
楓は押し黙る。
――今すぐイツキの前から消えて!!
言おうか言うまいか迷ったが、ガヤのことだからきっと由希と何かあったことなどお見通しなのだろう。
楓は全て話した。
すると。
「その女の言うとおりかもな」
「えっ…」
思わぬ言葉にガヤを見上げる。
ガヤは言った。
「もうイツキと会わないほうがいいんじゃねえか」
「…どうして?」
ガヤは黙ったまま答えようとしなかった。
どうして急にそんなことを言うのだろう。
あたしの背中を押してくれたのはガヤのはずなのに。
イツキを追いかけていってから様子が変だ。
いつものガヤじゃない。
「楓」
それは冷たい声だった。
「もうここにも来るな」
バタン、とドアが閉まる音が響く。
「タクマ。わりい、こいつ家まで送ってやってくれ」
「分かった」
「ガヤ!」
楓は慌てて車を降りてガヤの背中を追いかける。
「もう来るなってどういうことなの?ちゃんと説明してよ!」
「……」
「ガヤってば!」
すると楓は彼の背中が小刻みに震えていることに気付いた。
思わず足を止める。
「ガヤ…?」
さっきからガヤはあたしと顔を合わせようとしない。
ずっと背中を向けたままだ。
「…頼む」
やがて返ってきた声はどこか弱々しく。
「おれはこれ以上お前の辛い顔を見たくねえんだ」
それだけを言い残して、ガヤはプレハブに戻っていってしまった。