B L A S T
「嬢ちゃん。気持ちは分かるけど今は手紙のこともあるしオレらと会わないほうがいい。また前みたいに巻き込まれちゃ嫌だろ。あいつもそれを心配してんじゃねえかな」
楓は窓の外に視線を移した。
ゆるやかに流れる景色。
――おれはこれ以上お前の辛い顔は見たくねえんだ。
ガヤのあの言葉。
あれは一体どういう意味なんだろう。
あたしはタクマの言う心配だけじゃない気がした。
もっと他に別の理由が隠されている。
他に何かが―――。
それから学校に行ってもガヤの言葉が気がかりで授業も頭に入らなかった。
家路の途中。
自宅の向かい側にある藤ヶ谷家の駐車場にバイクが停めてあるのが見える。
≪悪い。今日は迎えに行けねえ≫
楓は放課後ガヤから送られてきたメールに落胆していた。
その時に今朝のことを問いつめようと考えていたからだ。
てっきりジュンの病院に行っているかと思っていたのに、バイクがここにあるということはガヤはもう帰っているということになる。
その証拠に部屋の明かりが点いていた。
どうやらガヤはあたしを避けているらしい。
ガヤはいつもこうだ。
これ以上追求されたくない時は相手と距離を置こうとする。
だからあたしもあまり深入りできない。
でも今回だけは簡単に引けなかった。
好きな人に会うなと言われて、誰が納得できるだろうか。
――だめだ。
やっぱり我慢できない。
楓は引き返すと大通りまで走った。
そして運良く通りかかったタクシーに乗車する。
行き先はもちろんBLASTのたまり場がある隣町。
ガヤに怒られることは覚悟の上だった。