B L A S T
突然、鏡の割れる音が鋭く響いた。
驚いた拍子にケータイを床に落としてしまい、慌てて拾おうとする。
――ジャリッ…。
その時、遠くで微かに足音が聞こえた。
どきり、とした。
冷や汗が額を伝う。
楓は息をひそめ、ドアの前までにじり寄った。
――ジャリッ…。
まるで砂利を踏むようなその音はゆっくりと近付いてくる。
やばい。
こっちに向かってる。
しかし逃げようにも逃げられない。
今ドアを開ければその足音の人物と鉢合わせになってしまう。
狭い窓からも出られそうにない。
どうしよう。
誰か。
そして、その音はドアの前まで来るとぴたりと止んだ。
長い沈黙。
やがて、
「そこにいるのは誰だ」
恐ろしく、低い声がした。