B L A S T
あの日からあたしはほとんど抜け殻だった。
学校にも行く気がしなくて、風邪だと仮病を使った。
こんな時ガヤの迎えがなくてよかったと思う。
理由もなく休んでいると、ガヤは無理矢理引きずってでも学校に行かせようとするから嫌なのだ。
楓はベットで何度も寝返りを打っては、デスクの上に置いた紙に目を移した。
折りたたんだ淡いブルーのメモ用紙。
――一兄のことが気になるのならここに行ってみて。
そう言って昨夜ジュンに渡されたのは手書きの地図だった。
赤い線で囲んであるその場所は病院の近くだ。
――ここに行ったら何か分かるの?
ジュンは何も答えず、ただ小さく頷いた。
――本当はずっと黙っていようと思っていたけど、やっぱり楓さんには後悔してほしくないから。
帰り際、そう言って笑うジュンはどこか悲し気に見えた。
楓は起き上がり、そのメモ用紙を手に取る。
この場所に行けば、何かが分かる。
でもどうしてだろう。
今のあたしはなんだか行く気がなれなかった。
これ以上イツキの迷惑になるようなことはしたくなかったし、何より彼のことを早く忘れたかった。
楓はデスクの引き出しを開けると、その紙を奥のほうにしまった。
まるでイツキという存在から目を背けるように。