B L A S T
それから時間だけが過ぎて、気が付けばカレンダーは夏休みに入ろうとしていた。
体育館の中は蒸し暑く、汗が滴り落ちる。
楓は終業式が終わると、すぐさま保健室に向かった。
「あら、真田さん。久しぶりだね。風邪はもう大丈夫?」
扉を開けると、江原先生がガラスの瓶に花を装っているところだった。
今の季節にふさわしいヒマワリだ。
「まあ、はい」
実は仮病なんだけれど。
楓は嘘をついたことに少し罪悪感を覚えながら、そばにあった丸椅子に腰掛ける。
「でも前と比べたら真田さん、ここに来る回数減ったよね」
「そうですか?」
江原先生はにっこりと笑った。
「先生は嬉しいよ。それだけ真田さんが成長したっていうことなんだから」
確かに前までは教室に一人でいることが苦痛で仕方なかった。
でもここ最近は毎日が楽しくてあたしは前ほどクラスの噂や男子のいたずらも気にならなくなっていた。
それもすべてBLASTのみんな、そしてイツキと出逢ったからだ。
だから感謝していたのに…。
――迷惑なんだ。
彼にとってあたしは疎ましい存在だったのだと分かると、また目頭が熱くなった。