B L A S T
「…真田さん?なにかあったの?」
うつむいたままの楓を心配した江原先生が心配そうに顔を覗き込む。
楓は慌ててかぶりを振った。
「いえ、何でもありません」
それでも江原先生には見抜かれていたようで。
「…もしかして前言っていた好きな人のことかしらね」
図星を指されて胸がちくり、と痛む。
窓の隙間から生温い風が入ってカーテンが揺れた。
そばにあったヒマワリがカーテンに引っかかりそうになり、江原先生は花瓶をベットのそばに移動させる。
「江原先生」
楓はその背中に声をかける。
「なあに」
「なんで人は、恋をするんですか」
振り向いた江原先生と目が合った。
「恋をしても自分が辛いだけなのになんで人は人を好きになるんだろう。こんな苦しい気持ちになるならあたし恋なんかしなきゃよかった」
イツキさんを好きにならなければよかった。
好きにならなければ、今のように苦しむことなんてなかったのに。
江原先生は黙ってヒマワリを見つめた後、呟くように言った。
「そうね」
えっ、と楓は江原先生に目をやる。
「私も昔はそう思っていた時期があったわ。恋をしなければ自分が苦しむこともないのに。今のあなたと同じだった。きっとそれは誰もが持つ悩みなんでしょうね」
そう言って江原先生はふふ、と笑った。