B L A S T
窓の外の景色は薄暗く、相変わらず人気が少ない。
次々と通り過ぎていく工場から出ている煙は空を灰色に染めていた。
赤いマーチの車を運転しながら江原先生はこの街を不気味なところね、と言った。
やがてブレーキがかかる。
廃墟になった学校を目の前にして、江原先生が生唾を飲み込む音が聞こえた。
「…ここが、そうなのね」
はい、と楓は答えた。
でも本当に教えてよかったんだろうか。
心の中で葛藤を抱きながら、先を行く江原先生の後を追う。
体育館のところまで来てから、楓はふと違和感を抱いた。
今日は変に静かだ。
いつもこの時間帯にはメンバーが集まって卓球やバスケで遊んだり、バイクを改造したりしているはずなのに。
人の姿が見当たらない。
その時、向かいのプレハブから声がして見ると玄関先で一人の女の子が立っていた。
「由希!」
江原先生が慌ててプレハブに駆け寄る。
「お母さん!」
その女の子は由希だった。
大きな目を丸くして、驚いている。
「どうしてここに…」
「あなたって子は!最近学校の帰りが遅いと思っていたらこんなところ出入りしてたのね」
楓は江原先生が怒っているところを初めて見る。
声を荒げる江原先生に、由希はうつむいて謝った。
「…ごめんなさい」
はあ、と江原先生がため息を吐く。
それから由希の手をとった。
「帰るわよ」
「でもお母さん…」由希が慌てて抵抗する。
「いいから。話は後で聞くわ」
その時だ。
江原先生の足がぴたりと止まった。