B L A S T
Act.25
「一樹はね、先生の息子なの。
あの子が五つのときかしら。
私はまだ小さかった由希を連れて家を出たの。
理由は夫の暴力だった。
それなのに私はその夫の元に一樹を置いていったのよ。
ひどい母親よね。
子どものどちらかを置いていけば離婚しないなんて言い張る夫に、私は早くここを出たい、離婚したい一心で気が付いたら一樹を差し出してた。
男の子だから大丈夫だろうって根拠もないのに勝手にそう思い込んでたの。
今思えば、私はあの子の気持ちを少しも考えてなかった。
私は自分勝手だった。
ねえ。
あの子のここ、本当は傷があるのよ。
今は刺青で隠しているみたいだけれど。
私が家を出て、夫は一樹にひどく当たるようになった。
その時に殴られた拍子に窓ガラスが割れて、その破片で大きな傷を負ったらしいの。
何針も縫ったって聞いた。
夫から聞いて急いで病院に駆けつけたけど、私はあの子のところに行けなかった。
だって私はあの子を捨てたようものだから。
あの子だって私を恨んでる。
そんな私にあの子のそばにいる資格なんてない。
そう思って、病院を引き返したの。
でもね。
もしあの時あの子のそばにいてあげれば。
あの子を抱きしめてあげていたら。
家を出るとき、あの子も一緒に連れていけば――――。
私は後悔してる。
ずっとずっと後悔してるの…」