B L A S T
パールホワイトの車が遠ざかっていく。
校門を出ると、タクシーが停まっていた。
「お嬢さん、どちらまで」
「…」
「お嬢さん?」
うう、と嗚咽が漏れ、ずっと我慢していた涙が溢れ出す。
それを見た運転手が慌てふためくが、楓はしばらく小さな子どものように泣きじゃくった。
その時だ。
「いい加減にしなさいよ。運転手さんが困ってるじゃない」
えっ、と楓は顔を上げる。
いきなりタクシーに乗り込んできたその女の子は勢いよく楓の隣に座った。
「隣町までお願いします」
やがて窓の景色が流れる。
楓はハンカチで涙を拭うと、ちらりと隣を見やった。
太陽の光で、苺色のショートボブがより赤味を増している。
「元気そうね」
窓に視線を移したまま、由希は言った。
それは嫌みなのだろうか。
楓が眉をひそめると、由希はふふ、と微笑んだ。
「見てたわよ」
「…何をですか」
「イツキとのやりとり。全部見てた」
「…盗み聞きですか。悪質ですね」
また由希が笑う。
「そんなにつんけんしないでよ。私はあなたの好きな人の妹でもあるのよ。もう少し優しくしたらどう?」
妹。
あたしはずっと疑問だった。
イツキの妹である彼女がどうしてあんな事を言ったのか。
――イツキさんと付き合ってるんですか?
――そうよ。それがどうかしたの?
「どうして嘘ついたの?」
彼女と目が合った。