B L A S T
「イツキに頼まれたから」
「…」
「って言ったらあなたは信じる?」
「…からかわないで」
「ふふっ。冗談よ。あなたってすぐ顔に出るのね。分かりやすいわ」
楓はまた泣き出したいのを堪えて、うつむき加減に呟いた。
「あなたもあたしのことが嫌いなのね」
「…も?」
「心配しないで。あたしはもうイツキさんの前に現れたりしないから。あなたに言われたとおり消えてあげる」
ふいに由希の口元から笑みが消える。
「それは本気で言ってるの?」
こくり、と楓は小さく頷いた。
「そう。あなたにとってイツキに対する気持ちはその程度だったっていうことね」
もはや、言い返す気力もなかった。
これ以上イツキを追いかけても自分がみじめになるだけ。
こんな辛い恋は早いうちに終止符を打ったほうがいい。
そのほうがあたしにとってもイツキにとっても、お互いのためにいいことなんだと思った。
車内は長い沈黙が漂っている。
するとそれまで窓の景色を追っていた由希がぽつり、と小さく呟いた。
「だから私はあなたのことが嫌いなのよ」