B L A S T
やっかむわけじゃないがこういう時、おれは思い知らされる。
BLASTのメンバーにとってイツキは絶対なくてはならない存在で、誰もがイツキの言葉を待っている。
おれだけじゃなくメンバー全員がイツキという男を追いかけているのだ、と。
「でもイツキ」
「タクマ」
おれはタクマの肩を引き寄せた。
「イツキは今から行かなきゃなんねえところがある。邪魔すんな」
「なんだよ。行かなきゃなんねえとこって」
「大丈夫だ。ここはおれに任せろ」
「……」
「それともおれじゃ頼りになんねえか」
「いや、そういうわけじゃないけどよ」
「じゃあ心配すんな。お前もテツについて行ってやれ」
そう言って地図を渡すと、納得のいかない様子ながらもタクマは渋々と受け取る。
「分かった。またあとで連絡する」
「ああ。頼む」
バタン、とドアの閉まる音が室内に響いた。
やれやれと言うようにイツキがポケットの中から煙草を取り出す。
「あいつらにばれるのも時間の問題だな。特にタクマ」
勘の鋭いタクマのことだ。
きっと何かを感じ取っているに違いない。
「このままずっとメンバーに言わないつもりかよ」
「言ったところでどうにかなるわけじゃないからな」
「そうかもしれねえけどよ…」
耳の痛い話だ。
イツキの言うとおり、本当の話を聞いたからといってどうにかできる問題じゃない。
身動きのとれない自分が歯がゆく感じた。
「それより」イツキは灰皿に煙草を押し付けた。
「踏み込む時は教えてくれ。俺も行く」
えっ、とおれは目を丸くする。