B L A S T
運命は残酷だ。
たったひとりの人生で周りの人生も変わる。
そうして生まれるのは喜びだったり怒りだったり人によって様々だが、今のおれに残っているのは悲しみだけだった。
「くそ…」
おれは壁にもたれ頭を抱えた。
――どうしてイツキが。
先程エレベーターの前で別れたイツキの後ろ姿が目に浮かぶ。
もし神様が存在しているのならどうしてあいつを選んだのだろう。
おれはまだあの背中を追いかけていたいのに。
おれだけじゃない。
タクマも、カズもだ。
テツだって。
BLASTのメンバー全員がイツキを慕っているのに。
おれはやりきれなくなり壁を殴る。
「ガヤ…?」
その時だ。
エレベーターの扉が開き、おれは目を疑った。
ひらり、と揺れるワンピースの裾。
長い前髪を片手でおさえながらもう片方の手はブルーのメモ用紙を握りしめている。
そしてそれは突然吹いた強風によって飛ばされた。
――まさか。
どうしてあいつがここにいるんだ。
「楓…」