B L A S T
「ねえ、ガヤ。このビルに何があるの」
「お前はそんなこと知らなくていい」
「でも純平くん言ってた。このビルの六階に行けばイツキさんのことが分かるって。だから本当のこと教えてよ。ガヤは何か知ってるんでしょ!?」
「あいつ、余計なことしやがって」
チッ、とガヤは舌打ちを鳴らす。
「とにかく帰るぞ。お前も二度と妙な真似すんな」
「ちょっとガヤ…」
慌てて引き止めるもガヤは話を聞かず、その場を離れようとした。
やっぱりこのビルに何かあるんだ。
誰にも知られちゃいけないイツキさんの秘密が。
楓はぴたりと足を止める。
「分かった。もういい。ガヤが教えてくれないならあたしが自分で調べるから」
「…は?お、おい待てよ!楓!」
ビルのエレベーターに乗り、六階のボタンを押す。
ここは貸し切りビルらしく、上を見上げると階数ごとに店舗の名前が表示されていた。
そして、
「楓!」
ガコン、と大きな音がし、驚いた楓はなかなか閉まろうとしない扉に目をやった。
その奥でガヤが扉の隙間に手を入れて、力付くでこじ開けているのだ。
「てめえ!ちっとは言うこと聞けや!マジで殴んぞ!」
さすがは馬鹿力と言うべきか、扉はいとも簡単に開けられ、楓は外に出されてしまった。