B L A S T
プレハブの明かりが消えるのが窓から見えた。
やがて出入り口から傘を差しながら走る男二人の姿。
楓は男がタクマとカズを呼び出したのだと分かった。
――これでますます逃げられなくなってしまった。
ざあざあ、と止むことを知らない雨音に紛れて、足音は近づいてくる。
甘い香りがした。
その香りは男が吸い出した煙草から漂っている。
「悪りい」
振り向くとタクマとカズが立っていた。
二人は楓をちらりと見ただけで男に目を向けている。
彼らの表情がどこか強張っているようにみえるのは気のせいだろうか。
男はゆっくりと煙を吐き出しながら、静かに訊いた。
「お前ら、裏の車使ったか」
タクマが思い出したように少し慌てる。
「あ、いやそれは事情があってだな―――」
「使ったかと聞いてるんだ」
有無を言わせない男の態度に、タクマとカズは目を合わせ、観念したように小さく頷いた。
「俺もナメられたものだな」
男はくっ、と口元を上げて自嘲した。