B L A S T

「お前覚えてるか。この前の集会でイツキがドタキャンしたろ」

「…うん」


確かあの時、イツキは急用で来られないと聞いていた。


「あれ、本当はイツキは病院にいたんだよ」

「…病院?」

「いきなり倒れて救急車で運ばれたんだ」

「救急車って…」

「幸いあの赤毛の女が一緒にいたからよかったようなものの、もしかしたら死んでたかもしれなかったんだってよ」


言葉が出なかった。

本当のことが知りたい。

そう思っていたのに、あたしの耳はそれを拒絶していた。

だけどそうはいかなくて、やがて残酷にもガヤの声があたしの耳に届いた。





「あいつ、がんなんだ。脳に腫瘍があるらしい。それも…悪性のな」









甘い煙草の香り。



そういえばあの煙草はなんていう銘柄なのだろう。










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