B L A S T
Act.28



海に行きたい。




とあいつは言った。

大丈夫か、と聞くとあいつは小さく頷いた。

その表情に何の色も感じられない。

本当は大丈夫じゃないくせに。

それを知っていながら聞いたおれも大馬鹿だ。


「ねえ、ガヤ」

「…ああ」

「さっき言ったこと本当なんだよね」

「……」

「イツキさんは、あと半年しか生きられないんだよね」

「…ああ」

「そっか…。そうだったんだ」


そう言ったきり、海を黙って見つめる小さな後ろ姿が痛々しくて。

だからおれは言いたくなかったんだ。

あいつにだけは絶対に言いたくなかった。


「お前がそうやって泣くと思ったからおれは言いたくなかったんだ」


今さら後悔しても仕方がない。

あいつは何も答えなかった。
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