B L A S T
「彬兄も知ってたんだね。一兄の病気のこと」
ジュンから茶飲みを受取りながら、おれは頷いた。
「まあな」
「楓さん、大丈夫?」
「…とりあえず家に帰らせた。あの様子じゃ立つこともままならなかったからな」
「僕、やっぱり楓さんに言わなきゃよかったかな」
ジュンはひどく落ち込んでいる様子で肩を落としていた。
「どっちにしろいつかは知られることだったかもしんねえ。気にすんな。本当のことを知るのが早くなっただけだ」
「…うん」
おれはお茶を一気に飲み干すと、ベットのそばにあった丸椅子に腰掛ける。
「それでさっきの話の続きだ。どうしてお前はそのことを知ってたんだ」
ああ、とジュンは思い出したように言った。
「彬兄も知ってると思うけど一時期、一兄の様子が変だったときあったでしょ」
「…ああ、暴れ回って停学食らわされたときか。やっぱりお前もあいつの様子がおかしいと思ってたんだな」
「うん。だって一兄、普段は優しいのにむやみに暴力振るったりするなんて変じゃん。だから僕、おかしいと思って一兄の後をつけたんだ」
「後をつけた?」
「一兄、学校帰りにどっか行ってたみたいだったから。もしかしたら何か関係してるかもしれないって思って後を追ったら、あのビルに一兄が入っていくところを見たんだよ」
「…そこで本当のことを知ったんだな」
「うん。いい病院紹介したんだけどお前には関係ないって話聞いてくれなかった。僕、悔しかったんだよ。確かに僕はBLASTのメンバーじゃないけど、でも一兄の力になりたくて。見ていることだけしかできない自分がはがゆくて。一兄が自分のことを必要としてないのが悲しくて。そしたらだんだん一兄のことが腹立たしくなって。だって今までどんな問題もみんなで解決してきたのに一兄は一人で悩んでで。みんなを頼ろうとしない一兄がすごく嫌だった。だから僕はあの時WAVEに入るなんて言っちゃったんだ。どうしても一兄に認めてもらいたくてさ。でも一兄は僕のことを止めようとしなかった。あの時僕は本当に必要とされてないんだなってすごくショックだったな」