B L A S T
おれはやっと納得がいった。
あの時どうして二人が目を合わさなかったのかも、ジュンが突然WAVEに入るなんて言い出したのかも。
すべての矛盾がぴたりと当てはまった気がした。
「ジュン。それは違えよ」
おれは言った。
「あいつはお前に迷惑かけれねえって思ったんだ。お前に心配させたくねえって思って、あえて突き放したんだよ。あいつは口下手だからそうすることしかできなかったんだ」
自分より他人のことを考えるあいつのことだ。
きっとそうに違いないと思った。
「…一兄の容体ってそんなに危ないの?」
「おれも詳しくは知らねえが、がんは末期に入っていて医者曰くあの状態であれだけ動けるのは珍しいらしい」
「そんな…じゃあ一兄は」
「いつ死んでもおかしくねえってことだ」
間が空いた。
唇を噛んで涙を我慢しているジュンをおれは慰める。
「ジュンは納得できねえかもしれねえけどよ。あいつ、おれに言ったんだ。“これは俺の人生だ。どう生きるのかは俺の自由だ”ってな。馬鹿だよな。あいつは自分から死を選んでんだ。手術でもなんでもすりゃ少しでも望みがあるかもしれねえのによ。だけどそれがイツキの生き方ならおれらは黙って見守ってるだけしかできねえんだ。辛いだろうけどそれしかできねえんだよ」
そうだ。
今のおれにできることは奇跡を信じることだけだ。
「彬兄」
ジュンは鼻をすすりながらおれに訊いた。
「一兄は、死んだりなんかしないよね」
少し間を置いて、おれは答える。
「当たり前だ」