B L A S T
ふっ、と笑いがこみ上げてきた。
「なんだ。一番簡単なことじゃねえか…」
おれが笑っていることを不思議に思ったのか、それまで頭を下げていた由希がきょとんとしている。
「藤ヶ谷さん…?」
その時、プップーとクラクションの音が鳴る。
振り向くと、車の窓からテツが顔を出して腕時計を指差していた。
恐らく早くしろ、と言ったところだろう。
おれは了解、と手を上げる。
「悪りい。おれ、そろそろ行くわ」
おれはポケットの中からケータイを取り出した。
「この辺り治安悪いから一人で帰るんじゃねえぞ。今タクシー呼んだからそれまでここで待ってろ」
「藤ヶ谷さん…」
由希は不安気な表情だ。
おれはそんな由希を慰めるように肩をポンポン、と叩くと
「イツキのことなら心配すんな」
とにっと笑った。
「え…」
「必ず生きて帰らせる。だから心配すんじゃねえ」
「藤ヶ谷さん…」
「だからちゃんと待ってろ。分かったな」
「…はい!」