B L A S T
Act.29
何時間ほどそうしていただろうか。
家に帰ってすぐにベッドで横になり、気が付けば外は暗闇と化していた。
天井をずっと見つめていたせいか、コンタクトが乾いてしまっている。
楓は起き上がり、鞄の中から目薬を取り出す。
鏡を見ると泣き腫らした赤い目がみっともなく映っていた。
ざあざあ、と窓を打ちつける雨は段々と強くなっていく。
ーーイツキのことはもう諦めろ。
帰り際にガヤが言った言葉が頭の中を駆け巡っている。
こんなことってあるのだろうか。
まさか好きな人が病気だったなんて。
それも半年しか生きられない病気。
それを知ったあたしはどうすればいいんだろうか。
さんざん泣いたけど一つも答えが思い浮かばない。
ガヤの言うとおり、諦めればいいのかもしれない。
だけどもう諦めきれないところまで好きな気持ちが加速していたら、どうすればいいんだろうか。