B L A S T
やがて、インターホンが家中に鳴り響いた。
時計を見ると22時を過ぎている。
ーーこんな夜中に誰だろう。
そう思って玄関を開けると、そこにいたのは思わぬ人物だった。
「由希さん…」
苺色のショートボブが微笑む。
「随分な顔ね」
楓は慌てて泣き腫らした顔を隠した。
ふふ、と由希は笑う。
よく見るとその凛とした笑顔はイツキと少しだけ似ている。
「通りすがりにあなたの家を見かけたからちょっと様子を伺おうと思って」
「はあ…」
突然の訪問に驚いて呆然としていると、由希は凍えるように縮こまった。
「ねえ、夏とはいえ雨だから体が冷えるんだけど」
はっと楓は我に返り、慌てて彼女を家の中に入れた。
「ごめんなさい。汚いところですけどどうぞ」
「ふうん。ここがあなたの部屋か」
ベッドに腰を下ろしながら、由希は言った。
「お兄ちゃんはこの部屋に来たことあるの?」
「まさか!」
楓は顔を真っ赤にして、とんでもないというように手を左右に振った。
それを見た由希は何が面白かったのか、クスクスと笑っている。
「そんなに全力で否定しなくてもいいじゃない。冗談よ、冗談」
からかわれたのだと分かり、今度は本気にしてしまった自分を恥じた。
やっぱりこの人、意地が悪い。