B L A S T
「私って矛盾してるわよね…。あなたを見てると放っておけない自分がいる」
頬にかかった苺色の髪を耳に掻きあげながら、由希は続けた。
「最初はあなたをお兄ちゃんから引き離そうと思ってたのよ。だから付き合ってるだなんて嘘を付いたの。そうすればあなたはお兄ちゃんを諦めると思ってたから」
「…あたしがイツキさんのこと好きなこと、その時から気付いてたの?」
「当たり前よ。言ったでしょ、あなたすぐに顔に出るから分かりやすいって。お兄ちゃんと付き合ってるって言ったとき、あなた笑ってごまかしてたけど本当はショックだったってこと私分かってたんだから」
楓は何も言い返せなかった。
彼女にはなんでも見透かされているようで、なんだか悔しい気分だ。
「でもあなたは諦めなかった。ずっとお兄ちゃんに付きまとってなんてしつこいんだろうって思ったわ」
「……」
「ほら、またすぐ顔に出る。冗談よ」
「からかわないでよ」ふてくされる楓。
「そんな風だから、あなたのこと放っておけないの。お兄ちゃんもそう言ってた」
「…イツキさんが?」
「そうよ。前にも言ったと思うけどあなたのことはお兄ちゃんからよく話聞かされたの。そうね、例えばあなたが“風神”のリーダーを殴ったこととか。前から思ってたけど、あなた女の子なのに手癖がひどいのね」
「ほっといて下さい。どうせじゃじゃ馬女ですから」
「そうね。“無敵の楓チャン”だものね」
「誰に聞いたんですか、そのあだ名!」
「お兄ちゃん発信」
「…イツキさんてば」
笑いをこらえる由希。
もう怒る気力も失せてしまった。