B L A S T

ンーンー、と縛られながらもガムテープを必死に取ろうとしているカズの声だけが工場内に響いている。


ーーあいつら、どこに行ったんだ?


予想していなかった展開に戸惑う。

しばらく様子を見ていたが、セイジが戻ってくる気配は一向にない。


「おい、藤ヶ谷。チャンスなんじゃねえのか」

「今のうちにカズさん、助けにいきましょうよ」


タクマやテツの言うとおり、確かに助けるなら今しかない。


「ああ、そうだな」


頷きながらも、おれはどこか腑に落ちないでいた。

奴らにとってみれば、カズは人質のはずだ。

その人質を置いて行くなんて、あまりにも無防備過ぎやしないか。

疑問符が頭に浮かんでいたが、それでも行くことにしたのはタクマやテツがすでにカズの元へ向かっていたからだ。


「おいバカ、お前ら。勝手に行くんじゃねえ!」


おれは慌てて二人の後を追った。
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