B L A S T
「その嬢ちゃんが誰の女だか知ってるか」
「えっ、あたし!?」
いきなり自分の話題になったことに驚いた楓はとっさにタクマを見上げる。
「"あの男"の女なんだよ」
とタクマは言った。
――"あの男"って…誰?
あたしは誰の女でもないし、生まれてこのかた彼氏ができたこともない。
それともあたしがそう思っているだけで、知らない間に誰かの"女"になったのだろうか。
記憶を辿るが、心当たりは全くない。
楓はあ然とするしかなかった。
「あの男?」
イツキは眉をしかめる。
そしてそれまで黙っていたカズが割り込んだ。
「"風神"の女。そう言えば分かんだろ」
その時イツキの目が一瞬だけ大きく開かれたのを楓は見逃さなかった。
とたんにイツキの視線が全身に突き刺さる。
その目はいつかの優しさは消え明らかに敵意を剥き出しにしていた。
まるで楓を通して、誰かを見ているみたいに。
――"風神"。
ふと、楓はそれをどこかで聞いたことがあるような気がした。
どこだろう。
記憶を探ってみるがなかなか思い出せない。