B L A S T
「お前はここでこんな無駄な喧嘩なんてしてる場合じゃねえんだよ。もっと他にやらなきゃならねえことがあるはずだ」
ぴくり、とイツキの眉が動く。
「無駄だと?…お前、本気でそう思っているのか」
「ああ、少なくともお前にとってはな。そんな状態で喧嘩しても相手に失礼だろが。ちっともフェアじゃねえ」
返す言葉がないのか、イツキは黙っていた。
おれはイツキの肩をポンポンと叩くと、
「だからここはおれに任せろ。おれがセイジときっちりカタをつける」
ときっぱり言った。
それからタクマやテツにイツキを連れて逃げるように促す。
「よく分かんねえけどイツキも連れていけばいいんだな」
「ああ、頼む」
「じゃあイツキ、悪りいけど…ここは藤ヶ谷に任せようぜ」
イツキは終始、俯いたままだ。
そしてタクマが困惑しながらも、イツキの片腕を取ろうとした時だった。
「お前じゃ無理だ」
イツキがその手を振り払った。
えっ、とおれは振り返る。
「お前じゃ無理だよ、彬。お前にセイジは倒せない」
それはイツキの声とは思えないほど、恐ろしく冷酷だった。