B L A S T
「藤ヶ谷!」
おれの拳をタクマがとっさに阻む。
その向こうでイツキが涼しい顔をしていた。
その態度が憎たらしくておれは「くそ!」と地面に唾を投げかけた。
ーー…人が心配してやってるっていうのに!
するとおれの気持ちを読んだようにイツキは言った。
「そういうのが余計なお世話なんだよ」
もはや、言い返す気力もない。
怒りを通り越して、悲しい気分だ。
「…もういい。勝手にしやがれ」
「藤ヶ谷!」
おれはイツキを残して工場を出た。
やりきれない悲しみが心の中を彷徨う。
ーーお前じゃ無理だ。
結局、おれがイツキのためと思ってやっても、それは無意味なことなのか。
人が心配してやってるっていうのにあいつはそれを余計なお世話だと言いやがった。
人の気も知らねえで。
それならもうあいつのことは放っておく。
金輪際、心配なんかしてやるもんかよ!
ブルル、とポケットの中でケータイが震える。
「誰だよ!」
おれは無造作に通話ボタンを押した。
≪…もしもし≫
すると受話器の向こうから聞きなれた声が聞こえた。
画面を見るとそこにはよく知る名前が表示されている。
「…楓か。何の用だ」