B L A S T
「藤ヶ谷さん!」
突然、テツが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「どうした?」
「実はさっきメンバーに聞いたんですけど…」
その時、おれはなぜか胸騒ぎがした。
「その、…楓さんに似た女を見かけたという情報が入ってるんスよ」
「はあ!?」
先に反応したのはタクマだ。
「そりゃ見間違いだろ。いくら嬢ちゃんとはいえ、そんな無茶な真似するかよ。なあ、藤ヶ谷」
タクマは苦笑していたが答えないでいるおれを見て、その顔から笑みが消えていった。
「おいおい、マジかよ…。冗談だろ」
まさかとは思う。
ーーもういい!ガヤが止めないならあたしがイツキさんを止めるから!
おれだって見間違いだと信じたい。
「あの女ならやりかねねえな」
すると濡らしたタオルで傷だらけの顔を冷やしながら、カズが割り込んできた。
そして鋭い眼光でおれを見下ろす。「なに突っ立ってやがる」
「あの女も、イツキのことも、長年付き合ってきたお前が一番よく分かってんだろうが」