B L A S T


そうだ。



そうだ。
よく考えてみればそうだ。


あの時、おれはジュンにああ言ったじゃねえか。



ーーあいつはお前に迷惑かけれねえって思ったんだ。お前に心配させたくねえって思って、あえて突き放したんだよ。あいつは口下手だからそうすることしかできなかったんだ。


イツキは自分より他人のことを考える。

そう言ったのはおれじゃなかったか。



「ッ…イツキ!」


おれは急いで地面を駆け抜けた。

シャッターを勢いよく開ける。

セイジと向かい合っていたイツキがおれを見るなり目を丸くした。


「…彬」

「残念。邪魔が入りましたね」


いつの間にかセイジの周りには仲間が大勢集まっていた。

それぞれの手元にアルコール瓶が握りしめられている。

相手はイツキ一人だけだというのに、なんて卑怯な奴らなのだろう。


「セイジ、お前汚えぞ。タイマン張るならちゃんと正々堂々と闘いやがれ」


くっ、とセイジが鼻で笑った。


「正々堂々と闘ったところで何になるんですか。相変わらず藤ヶ谷さんは熱いなあ。実を言うと僕もあなたのそういうところが嫌いだったんですよ。何でも真っ直ぐで汚れを知らない。何度扱いづらいと思ったことか。ねえ、イツキさん」


とっさにイツキに目をやる。

しばらくしてイツキは静かに吐息を漏らした。


「そうだな…」


おれはうつむく。

心の奥がちくり、と痛んだ。
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