B L A S T
「イ、イツキ、さん…」
彼が駆け寄ってきて、あたしの手を握りしめる。
「…楓、なんでお前…」
優しい温もり。
ああ、よかった。
彼は無事だったんだ。
「よかった、イツキさんが無事で」
あたしが笑って言うと、イツキは眉をしかめて項垂れた。「…うして」
「…どうして、俺を助けたんだ」
あの鉄柱が倒れる寸前、イツキの後ろで見守っていた楓はとっさに彼の体を突き飛ばしていた。
彼を助けることに必死で、あの時あたしは自分のことはどうなってもいいと思った。
だってあたしにとって、彼は。
「イツキさんは、あたしの大事な人だから…」
彼の黒々とした瞳と目が合う。
「あんな、悲しいこと言わないで…」
ーーもし神様がいるとしたら、そいつはどうしても俺を殺したいらしい。
そう呟いたイツキはとても悲しい目をしていた。
だからあたしは彼を助けなきゃと思ったんだ。
ーー“俺はこれ以上生きていても意味がない"。そう言ってたッス。
いつだか聞いたテツの言葉が脳裏を横切って、あたしはどうしても彼に伝えたかった。