B L A S T
ーー愛する一樹へ。
私はあなたの母親としていつまでも見守っています。
良子
便箋に綴られた丁寧な文字。
あたしはこの時イツキが頑なに拒む理由をやっと理解した。
ーー江原先生だ。
黙って俯いているイツキの肩をガヤが抱き寄せる。
「お前の気持ちは分かるけどよ。お袋はたった一人しかいねえんだぞ。そろそろ許してあげてもいいんじゃねえか」
イツキはその手を振り払い、キッチンに行くと冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
「イツキさん」
「由希」
あたしが心配して近づこうとすると、彼は背中を向けたまま由希を呼んだ。
「今日は俺がお前の家まで送る」
「お兄ちゃん。じゃあ…」
「お袋に連絡しておけ」
思わず由希と見合わせる。
ぱっと花が咲いたように彼女は笑った。
「うん!」