B L A S T
プレハブの周りは一階の明かりに誘われて虫や蛾が飛び回っていた。
やっと試験が終わってここに来るのは数日振りになる。
壁一面を占領している“BLAST”のシンボルは最近塗りかえたみたいでどの落書きよりも目立っていた。
中に入ると、リビングのほうから賑やかな声。
食卓を囲むように座っているのはジュンとガヤ、それから由季だ。
彼らの手元には問題集が何冊も積み重ねられている。
「あっ楓さんだあ!久しぶり!」
こっそり様子を伺っていたらジュンに気付かれてしまった。
「試験終わったんだね。どうだった?」
「おかげさまで。純平くんが勉強に付き合ってくれたおかげでなんとか赤点は逃れられそう」
「それは良かった!」
にひひ、と白い歯を見せて笑う。
ジュンは無事リハビリを終え、今年の春に退院した。
そして今もあの有名な中学校の付属である高校に通っている。
しかも医学部を目指しているというから驚いた。
あんなに勉強することを嫌がっていたのにどういう心境の変化だろうと理由を聞いてみると、
「一兄みたいに病気で苦しむ人の力になりたいから」
とジュンらしい答えが返ってきた。
どんな壁も明るく乗り越えてきたジュンならきっといい医者になれると楓は信じている。