B L A S T
「お帰り」
黒々とした瞳と目が合った。
「ごめん、起こしちゃったね」
いや、と首を振りながらイツキはおもむろに体を起こす。
すると目元を抑えるように前屈みになった彼を楓がとっさに支えた。
「大丈夫?」
「ああ。たいしたことない」
「ねえ今日は家来る?お母さんがイツキのこと紹介しろってしつこいんだ」
「悪い。今日は先約がある」
「そうなんだ…」
「お袋が家に来いってうるさいんだよ」
ふふ、と楓は微笑む。
デスクの上にあった車のキーをポケットに入れると、イツキは楓の手をとった。
「それまでまだ時間があるから飯食いに行くか」
「うん!」
あ、と彼が振り返る。
後を追っていた楓は危うく彼の背中にぶつかりそうになった。
「どうしたの?」
「忘れるところだった」
チャリ、と金属の重なる音が聞こえたと同時に胸元に冷たい感触がした。