B L A S T
Act.4
車に乗り込むと、ガヤは後部座席で窓の外をじっと見つめていた。
その隣に腰を下ろしても、ガヤは楓の顔を見ようともしない。
てっきり怒られるかと思っていたのに、なんだか拍子抜けだ。
「行け」
ガヤの一言でエンジンの音がかかると、
「久しぶりだね、楓サン」
運転席の男が振り向いてにっこりと笑った。
柔らかい天然パーマと切れ長の目が印象的なその男は見覚えがあった。
セイジこと、北村誠二。
確か"風神"の副総長にあたる人で、時々ガヤの家に出入りしているところを見たことがある。
楓が少し頭を下げると、セイジは目を細めて言った。
「ご無事でなによりです、楓サン」
正直なところ、楓はなんとなくこの人が苦手だった。
楓より二つ年上にも関わらず敬語で話しかけてくることと、どこか裏があるように思えてならない笑顔が胡散臭い。
以前ガヤにそのことを話したら思いっきり睨られた。
人を見かけで判断するな、と叱られた。
楓はとりあえず愛想笑いを浮かべ、
「迷惑かけてすみません」
とだけ返した。