B L A S T
そして車はゆっくりと動き出し後ろの窓からはタクマやカズ、イツキの姿が遠のいていく。
彼らはその場を離れずにじっとこっちを見ていた。
車が角を曲がると、そこで彼らの姿は途切れた。
暗闇で光るいくつもののブレーキランプ。
大通りに入ったとたん、それまで車を囲んでいたバイクが次々とばらばらに散っていく。
楓はほっと一安心した。
両者とも睨み合う形が続いて少しだけ冷や冷やしたが、イツキの言ったとおり"戦争"は起こらずにすんだ。
これでやっと家に帰れる。
しばらくして窓の外に見覚えのある風景が流れると、
「もう二度とあいつらとは関わるな」
ガヤが小さく呟いたのが聞こえた。
彼は相変わらずそっぽを向いたままで続ける。
「それとあいつらは"ラスト"じゃない。"BLAST"。ブラストっつーんだ」
――BLAST。
ブラスト。
それが彼らのシンボル。
どういう意味なのだろうと思ったが、今はガヤに聞ける雰囲気ではなかった。
窓に映る彼の表情がどこか冷たい。
――もう二度とあいつらとは関わるな。
その言葉の裏に、イツキとのことが隠されているような気がした。
やっぱり彼らの間に何かがあったんだ。
楓はガヤの胸元に目をやった。
満月の光に照らされて、ネックレスが銀色に光っている。
それはイツキが身につけていたものと同じ、王冠の形をしていた。