B L A S T
まるで昨日の出来事が夢のようだ。
目を開けると今日も太陽の光が眩しい。
いつもより少し早く朝を迎え、鏡で寝癖を整えながら壁に掛けてある制服を着る。
赤いスカーフを結んでいたら、あの真っ赤なソファーを思い出した。
プレハブの部屋にあったそれは彼の席だと確かカズが言っていた。
今ごろ彼、イツキはどうしているだろうか。
昨日の夜からそんな事ばかり考えてしまう。
たぶんガヤとの確執があることを知ったからだろう。
もう二度と、会うことはないのに。
車の窓からゆっくりと遠のいていくイツキの姿がなかなか頭の中から離れていかなかった。
その姿を打ち消すように楓は頭を強く振る。
もうあの人のことを考えるのはよそう。
ガヤと何があったのか気になるところだけど、知ったところできっとあたしにはどうすることもできない。
それにもう二度と関わらないほうが自分やガヤ、そしてイツキのためにもなる気がした。