B L A S T
「よお、どうした。朝から暗え顔して。ブサイクがよりブサイクになってんぞ」
楓は無言でガヤのバイクに跨った。
ガヤが怪訝そうに眉を寄せていたけれど、今は言い返す気にもなれない。
「変なヤツ…」
そう呟いてバイクを走らせる。
昨晩の冷たい態度が嘘のようにガヤはいつもどおり明るく振る舞っていた。
話すことは喧嘩の自慢ばかり。
昨日迎えに来れなかったのは学校で乱闘騒ぎが起きたことが原因だとガヤが申し訳なさそうに言った。
やっぱり楓の予想は当たっていた。
勝敗は訊くまでもない。
ガヤの無傷が勝利を物語っている。
「じゃあな。帰りにまたメールする」
「うん、待ってる…」
ガヤにヘルメットを返して、楓は重い足取りで学校に向かう。
先生にどう言い訳しよう。
あれを忘れたなんて呆れられるんじゃないだろうか。
自然とため息が出た。
「楓」
振り返ると、ガヤがバイクに跨ったままこっちを見ている。
彼は静かに口を開いた。
「迷惑だったらちゃんとはっきり言えよ」
通り過ぎる人々の視線が突き刺さる。
その中で好奇心の目を向けてくるのは楓の通う学校の生徒ばかりだ。
「…迷惑ってなにが?」
その視線を鬱陶しく思いながら楓は首を傾げた。