B L A S T

「それぐらいあの男は凶暴なんだから。総長だかなんだか知らないけどあそこは関わると厄介だでね」


近所の田中おばちゃんはああ言ったけれど、あんなやつのどこが怖いんだか。

確かに見た目は厳ついけど、昔はハナタレ小僧だったし。
泣き虫だったし。

楓ちゃん楓ちゃんってくっついてたし。

出席日数なんか気にするし。

暴走族に入ったのだってただのバイク好きからだし。

本当に凶暴だったら自分のせいだって責任感じてあたしを送り迎えなんかしない。

口は悪いけど、ガヤが本当は優しいこと知ってるから、あたしも黙って学校に行くわけで…。

信じてもらえないってけっこう辛い。

重い足取りで教室に着くと、机の上は相変わらず落書きでびっしりと埋められていた。


「総長おはようございます!」


そう言ってからかってくるバカ男が数人。

にたにたと気味の悪い笑みを浮かべながら楓の様子を伺っている。

その視線がかなりうざい。

もし、ここでガヤみたいにキレて


「いてまうぞ、ごるぁあ!!」


なんて声を出した日には悪夢の始まりだ。

楓は強く拳を握りしめることで沸々とわいてくる感情をなんとか抑えた。
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