B L A S T
「昨日のことがあったのもたぶんおれが原因だったりするんだろ。これ以上お前を巻き込みたくねえし、もし迷惑に思ってんだったら今日で送り迎えはやめる」
そう言ってうつむくガヤの姿は昔と重なった。
楓ちゃん楓ちゃん、と付いてきたあの頃。
いつも楓の顔を伺っては感情を剥き出しにしていた。
あたしが怒るとガヤは泣いて、あたしが泣くとガヤも悲しくなる。
あたしが笑えばガヤも笑っていた。
そうやって人の顔色ばかり伺うところは今も健在のようだ。
「…バカガヤがなに気づかってるのよ。こう見えてもあたしは強いんだからね。見くびらないでよ、ばーか」
楓はガヤに向けて中指を立ててみせた。
ガヤは一瞬目を丸くしていたけれど、すぐにその表情はゆるんだ。
無邪気な少年のように顔をくしゃくしゃにして、大きな八重歯を見せる。
いつものガヤの笑顔だ。
「そういやお前、昔交通事故でトラックに当たったのに無傷だったっけ。じゃあ心配することねえな」
「ちょっと!いつまでそんな昔のこと覚えてるのよ。だいたいあたしが言ってるのはそういう強いって意味じゃないんだからね」
「分かってる分かってる。じゃあな"無敵の楓チャン"」
「その呼び方やめてよ、バカガヤ」
ガヤは舌を出してみせながら、エンジン音を残してその場を去った。