B L A S T
するとカズがまるで楓の心を読んだように釘を刺した。
「またあの男を助けに呼ぶような真似しやがったら、海に沈めて二度と這い上がれねえようにしてやる」
恐ろしくドスの利いた声に負けて楓は肩をすくめた。
ごめんなさい、と小さく謝る。
なんであたしが謝らなければならないのか。
本当はガヤが怖いだけのくせに。
バカカズのばか。
赤信号で車は止まり、タクマが振り返った。
「嬢ちゃん。心配しなくても学校が終わる時間までにはちゃんと戻してやっから。オレら嬢ちゃんとちょーっと話がしたいだけだからさ」
納得できない楓は窓の外に目を向けてふてくされる。
「それならわざわざこんな強引な真似しなくてもいいじゃないですか。話をするだけだったらいつでもどこでも聞きますよ。もちろんガヤと一緒に」
と嫌みったらしく言うとガヤが鋭い目を向けてきた。
彼は苛立ちを抑えるように煙草をくわえ、苦い煙を吐く。
「オレらだって好きでこんなことやってるわけじゃねえよ。あの男が"風神"である以上はこうするしか方法はねえんだ。敵と馴れ合ってちゃ下の衆に示しがつかねえからよ」
楓が思ったのはやっぱり暴走族の考えることは理解不能、ということだけだ。
なんとなくカズの言っている意味は分かるけれど、だからといって何でもしていいわけじゃない。
一般人をそっちの世界に巻き込まないでほしいと思う。