B L A S T
駅沿いの商店街は最近近くにできたショッピングセンターに客足をとられたせいか、活気がなかった。
シャッターのほとんどが落書きで埋められている。
人気のないアーケード通りを越えると、すぐ左に曲がったところに喫茶店がある。
その店の名前は「珈琲茶屋」といった。
準備中と札が掛けられてあるにも関わらず、タクマとカズは中に入り、カウンターの奥に声をかけた。
「テツ。いつものね」
奥から顔を出したのはサングラスをかけたパンチパーマの古風な男、テツだ。
豹柄のスパッツが妙に似合っているのが可笑しい。
「了解ッス。待ってて下さい。今コーヒー用意しますから」
そう言ってテツはまた奥に入っていった。
どうやらこの店はテツの家のようだ。
タクマによると、この喫茶店はテツの亡くなった父親の置き形見で、今は母子で経営していると言う。
そのために通っていた高校も中退したと聞いて、いろいろ苦労しているんだなとテツに同情した。
それからタクマとカズは窓際の席に、楓はその向かいに腰掛けた。
誰もいない店内にBGMだけが流れる。
壁にはたくさんのプロマイドが無造作に貼られており、中央の写真は"BLAST"と人文字が写っていた。