B L A S T
「あっオレ族マニアなんッス。特にBLASTが最高ッス。気に入ったのをこうやって壁に貼って、ここに来た奴らにBLASTのすごさをアピールしてるッスよ」
持ってきたコーヒーをそれぞれに配りながら、テツが自慢げに話した。
サングラスの奥で光る無垢な瞳はBLASTを心底愛しているのだと思わせる。
しかし恐らく偽物だと思うが、写真の中には頬をすりつけるようにしてナイフを舐めている男も写っており、アピールどころか営業妨害になっているのではないかと心配にもなる。
「けっこう好評なんスよ、BLASTの宣伝」
と欠けた歯を覗かせてへらへら笑うテツに、この店の行く先がますます不安になった。
ふと、他と比べて一際目立つ写真が目に入った。
見慣れた顔に、楓は思わずにじり寄る。
それはあのプレハブの部屋で撮られたものなのか、赤いソファーに座っている三人の男が写っていた。
黒の特攻服を着て、中指を立てている右の男が、
――ガヤ。
煙草をくわえて睨みつけている左の男は、
――イツキ。
彼は白の特攻服を着ていた。