B L A S T

「それ藤ヶ谷さんがまだBLASTにいたころの写真ッスよ。カッコいいッスよね。オレにとってイツキさんと藤ヶ谷さんは最高のコンビでした。二人のコンビは巷じゃ結構有名だったんスよ。えっ知らないッスか?あの二人が組んだらこの街じゃ刃向かう奴なんていないんじゃないッスか。それぐらいコンビネーション抜群で喧嘩も半端なかったッスから。でも今からちょうど一年前ですかね。あの事件が起きてから二人は―――」

「テツ、黙れ」


カズの低い声に遮られて、それまでマシンガントークだったテツが固まったように動かなくなってしまった。

みるみるうちに、彼の表情が恐怖の色で滲んでいく。

カズの鋭い睨みに怖じ気ついているようだ。


「テツ、悪りいな。オレら嬢ちゃんに大事な話があんだ。ちょーっとばかし席外してくんねえか?」


とタクマが申し訳なさそうに手を合わせると、


「あっいえ。こちらこそ口が過ぎてすいません。それじゃ失礼します。ごゆっくりどうぞ」


目が覚めたようにテツはタクマやカズに深く頭を下げて、素早くその場を離れた。

ふう、とため息を漏らしたのはカズだ。

煙草に火を灯し、煙を吐き出しながら天井を仰いでいる。

タクマは背もたれから体を起こすと、話を切り出した。


「さて、と。そろそろ本題に入っか。嬢ちゃんをここに連れてきたのは他でもねえ。さっきも言ったように、嬢ちゃんに一つだけ頼まれてほしいことがあんだ」

「はあ…」


楓はなんだか腑に落ちない気分だ。

白い煙で視界がぼやける中、あの写真だけが気がかりで仕方がない。

恐る恐るタクマに聞いてみることにした。


「あの、…ガヤとイツキ、さんの仲が悪くなったのはさっきのテツっていう人が言ってた"あの事件"となにか関係があるんですか?」
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