B L A S T

ガヤとはほぼ毎日一緒にいるにも関わらず、タクマから聞かされたのはすべて初めて聞く内容ばかりだ。

中でもガヤがBLAST、暴走族の仲間入りしたのは当時中学の同級生だったイツキに腕を見込まれて誘われたということに驚いた。

楓はてっきりバイクが好きだから暴走族に入ったのだと思いこんでいた。

現にガヤはそのとおりだと否定しなかった。

もともと楓は暴走族に対していい印象を持っていない。

そのことを知ってか、ガヤは喧嘩やバイクのことだけで、必要以上にそういう類の話はしてこなかった。

なんだかガヤの知らない一面を知ってしまった気分。

彼なりに気を使ってくれたことは嬉しいけれど、ガヤが急に遠くに感じて寂しくなった。


「一年もしないうちにイツキは総長、藤ヶ谷は副総長の座に上りつめた。先代も驚いてたよ。オレら、あいつらと同期みたいなもんで何度か刃向かったけど到底かなわなかった。あいつらの野望がハンパなくて負けちまったよ」

「野望?」


タクマは口角を上げて言った。


「あいつらの野望はBLASTで全国制覇を果たすこと。全国の野郎ども引き連れて走るんだとさ」


バカだ、と思ったのは一般の人なら誰でも共感しただろう。

彼らの考えは理解できないことばかりだったが、ここまでくると彼らの短絡的思考をあっぱれに思う。
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